- 2026年8月29日
マンション投資は家賃が入るのに、「儲からない」と言われるのはなぜか。販売資料では黒字に見えるのに、毎月の手残りが少ないと不安になりますよね。
理由は、家賃収入、表面利回り、税務上の所得、口座に残る現金、売却まで含めた利益が、それぞれ別の数字だからです。どれか一つだけを見ると、収益を大きくも小さくも見せられます。
この記事では、特定の利回りなら儲かる・儲からないと断定しません。家賃から支出と返済を引き、購入から売却までを同じ表へつないで判断します。
利回り
分子と分母、含まれる費用、家賃の根拠を確認します。
手残り
ローン返済と年費用を含む月次キャッシュフローを見ます。
総収支
購入時・保有中・売却時の現金を最後に合算します。
家賃収入と利益は同じではない
月8万円の家賃が入っても、8万円が利益ではありません。ローン返済、管理委託料、管理費、修繕積立金、固定資産税等、保険、空室・原状回復・設備交換の費用が出ます。
さらに、ローン返済には元金と利息があります。現金はどちらも口座から出ますが、税務上の必要経費としての扱いは同じではありません。減価償却費は税務上の費用になり得る一方、その年に同額の現金を払う費用ではありません。
| 数字 | 基本的な見方 | 混同しないもの |
|---|---|---|
| 家賃収入 | 入居者等から入る賃料 | 利益・手残り |
| 不動産所得 | 税法上の収入-必要経費 | 口座残高 |
| キャッシュフロー | 実際の入金-支出・返済 | 税務上の所得 |
| 総利益 | 購入から売却までの現金等 | 単年の黒字 |
「家賃でローンを返せる」は、家賃が返済額を上回るという意味かもしれません。しかし、返済以外の費用を入れた後に現金が残るとは限りません。言葉を計算式へ直し、何を引いた数字か確認します。
反対に、税務上の所得が赤字でも、その金額と同じだけ現金が減ったとは限りません。減価償却や元金返済の扱いが異なるためです。税務表と現金表を二列に分けると、節税と運用を混ぜずに済みます。
「儲からない」という結論も、毎月赤字なのか、売却までの総収支が赤字なのか、期待した利回りに届かないのかで意味が違います。まず自分が何を利益と呼ぶか決めます。
表面利回りから抜けやすい支出
表面利回りは一般に「年間家賃収入÷物件価格×100」で示されます。比較の入口にはなりますが、購入時諸費用や保有費用を十分に反映しません。また、年間家賃が満室・現在家賃・想定家賃のどれかで結果が変わります。
空室・管理・修繕・税・保険
表面利回りから抜けやすいのは、空室と家賃下落、賃貸管理手数料、建物の管理費・修繕積立金、固定資産税等、保険、原状回復、設備交換、募集費です。購入時の登記や融資などの諸費用、売却時費用も別です。
実質利回りを示す場合も、どの費用を入れるかが統一されているとは限りません。「実質」と書いてあるから安心せず、分子の年間手取りと分母の投下額を確認します。購入時諸費用を分母へ含むか、ローン返済を含むかも見ます。
| 利回り確認 | 計算例 | 不足しやすい情報 |
|---|---|---|
| 表面利回り | 年間家賃÷物件価格 | 空室・全費用・借入 |
| 運営後利回り | 家賃-運営費÷投下額 | 費用の範囲・臨時支出 |
| 自己資金利回り | 年間手残り÷自己資金 | 借入リスク・出口 |
| 総収益率 | 保有中+売却結果 | 期間・税・時間価値 |
たとえば物件価格2,000万円、月家賃8万円なら、満室年家賃96万円、表面利回り4.8%です。ただし、年18万円の管理関連費、年8万円の税・保険、空室・修繕予備費年12万円を仮に入れると、返済前の受取は58万円です。これは2026年8月25日時点の説明用仮定で、個別物件の費用を示すものではありません。
家賃8万円も、現入居者の契約額、募集額、査定額で意味が異なります。礼金やフリーレント、家具付きなどの条件があれば実質受取へ直します。周辺の最も高い募集事例だけを採用しないでください。
利回りの分子・分母を詳しく比べる場合はマンション投資の利回りを確認してください。複数物件は同じ計算式で比べます。
ローン返済後の手残りを月単位で見る
会社員の家計に直結するのは、ローン返済後に口座へ残る現金です。月次表では、家賃、管理委託料、管理費、修繕積立金、返済を毎月並べます。年次表では、固定資産税等、保険、申告関連、臨時修繕を加えます。
年費用を無視すると、入居中の月だけ黒字に見えます。年12万円の支出なら月1万円として積み立て、実際に支払う月は積立から出す形で見ると、家計の持ち出しを誤解しにくくなります。
| 月次収支の欄 | 標準ケース | 悪化ケース |
|---|---|---|
| 家賃 | 根拠ある現在家賃 | -5%・-10% |
| 空室 | 実績・地域根拠 | 1〜2か月増 |
| 金利・返済 | 現在条件 | 金利上昇後を試算 |
| 管理・修繕 | 現在額 | 計画上の増額・交換 |
| 税・保険 | 年額を月割り | 更新見積りで修正 |
月5,000円の持ち出しなら小さいと感じるかもしれません。しかし年6万円、10年で単純に60万円です。ここへ空室、設備交換、税、売却結果が加わります。一方、その間に元金が減る効果もあるため、持ち出しだけで全投資結果を断定しません。
元金返済で残債が減ることは資産形成の一部になり得ますが、物件価格が同額で維持される保証はありません。「元金が減った額=利益」と置かず、各時点の売却見込みと費用を並べます。
変動金利の場合、金利が上がったケースを返済条件に沿って試算します。返済額の見直しルールは契約により異なります。営業資料の一律計算ではなく、金融機関の返済予定表・説明を基準にしてください。
実際の入力順はマンション投資の収支シミュレーションで確認できます。標準・悪化・早期売却の三つを保存し、資料が更新されたら前提日も更新します。
節税額を運用利益に足さない
減価償却費などにより税務上の不動産所得が赤字となり、給与所得などとの損益通算で税負担が軽くなる場合があります。ただし、節税額は給与、物件、借入、減価償却、他の所得・控除などで変わります。
国税庁は、不動産所得の赤字でも、土地等を取得するための借入金利子に相当する部分などは損益通算の対象とならないと案内しています。「不動産の赤字は全額給与から引ける」と一律に計算しないでください。
また、建物の減価償却は永久に同じではなく、売却時の取得費計算にも関係します。購入初年度の税効果だけを長期間繰り返し、運用利益へ足すと結果を誤りやすくなります。
| 分ける表 | 入れるもの | 判断 |
|---|---|---|
| 運用前税引前 | 家賃-運営費-返済 | 物件と借入の現金耐久力 |
| 税務 | 収入、必要経費、減価償却等 | 税理士・税務署へ確認 |
| 税引後現金 | 実際の納付・還付後 | 家計への最終影響 |
| 出口 | 譲渡所得・税と売却現金 | 保有中と合算 |
節税を抜くと持ち出しに耐えられない計画なら、税効果の前提が変わったときに苦しくなります。税は副次的な結果として確認し、物件単体の収支を先に見ます。詳しくはマンション投資が節税にならないケースで整理してください。
申告は個別事情で異なります。この記事の計算例を申告へ転記せず、最新の国税庁情報と税理士等へ確認します。営業担当者が税理士資格を持たない場合、個別税務の最終判断を任せないことも大切です。
売却まで含めた総収支を確認する
毎月黒字でも、購入時の自己資金と諸費用、売却時の価格下落・費用を含めると総収支がマイナスになる可能性があります。反対に保有中が小幅赤字でも、残債減少と売却結果を含めて総収支がどうなるかは別に計算します。
総収支は「売却代金-ローン残高」だけではありません。購入時現金、保有中の受取と支出、税、売却費用を時系列で合算します。査定額は成約額の保証ではないため、複数の価格を置きます。
| 時期 | 入金 | 出金 |
|---|---|---|
| 購入時 | 融資 | 自己資金、諸費用 |
| 保有中 | 家賃、税効果等 | 返済、管理、税、修繕等 |
| 売却時 | 売却代金、精算金等 | 売却費用、残債、税等 |
| 合計 | 全期間の入金 | 全期間の出金 |
5年、10年、15年など複数時点で計算します。長く持てば必ず有利とは限らず、売却費用を短期で負担する不利だけで決まるわけでもありません。家賃、修繕、残債、税、将来価格の組合せで変わります。
将来価格は、周辺取引、賃料、買主の期待利回り、管理状態など複数根拠で置きます。購入価格へ単純な下落率を掛けた一つの線だけにしないでください。高い査定と低い査定の理由を質問します。
物価や時間価値まで厳密に見る方法もありますが、まずは名目の現金を漏れなく並べることが先です。複雑な指標を使っても、空室や売却費用が抜ければ判断は良くなりません。
資料の数字を自分の収支表へ移す
資料に利回りや月々の負担が書かれていても、そのまま結論にしません。家賃の種類、空室、費用、金利、期間、売却価格を自分の共通フォーマットへ移します。複数社・複数物件を同じ式で比べて初めて差が見えます。
| 転記順 | 確認する根拠 | 比較の単位 |
|---|---|---|
| 家賃 | 契約、相場、査定 | 月額・年額 |
| 運営費 | 管理、修繕、税、保険 | 年額を月割り |
| 借入 | 金融機関の条件・返済表 | 現在・上昇ケース |
| 出口 | 複数査定、費用、残債 | 5年・10年等 |
初期・維持費の漏れはマンション投資の費用一覧も使って確認します。数字の根拠がなく、質問への回答が口頭だけなら、その欄は空欄のままにせず「未確認」と記録してください。
計算結果は前提によって変わります。黒字ケースだけでなく、悪化ケースと早期売却を保存し、費用や金利が更新されたら再計算してください。「儲かるか」の答えを先に求めるより、どの前提までなら家計が耐えられるかを決める方が実用的です。
収支表を完成させるときは、数字の出所と基準日も一緒に保存します。家賃と費用の確認日が何年も違えば、正確に足し引きしても現在の判断には使いにくくなります。
- 家賃は契約額・査定額・募集額を分ける
- 空室は会社全体の入居率でゼロにしない
- 毎月費用と年費用、臨時費用を分ける
- 返済は元金・利息と実際の支払額を見る
- 税務上の所得と現金収支を別表にする
- 売却価格・費用・残債を同じ日付で並べる
- 標準・悪化・早期売却を同じ式で比べる
家賃は、現在の入居者が払っている金額を基準にする場合でも、退去後の再募集額を別に置きます。更新料、礼金、フリーレントなど一時収入・条件は、毎月家賃と混ぜず年次へ入れます。
空室の置き方は、年間入居率をそのまま一室へ掛けるだけでなく、退去から原状回復、募集、契約、賃料発生までの日数で考えます。その期間も返済と固定費が続くことを月次表へ反映します。
管理費・修繕積立金は、購入時の金額と長期修繕計画上の予定額を分けます。予定が未確定でも、増額ケースを置いて手残りへの影響を見ます。安い現在額だけを完済まで伸ばさないでください。
設備予備費は、給湯器等の交換額を特定年に置く方法と、毎年積み立てる方法の両方で見ます。年平均にすると月次の耐久力が分かり、特定年に置くと現金不足の時期が分かります。
借入では、金利上昇だけでなく、繰上返済や売却時の一括返済に関する条件も入れます。融資手数料を購入時現金、返済中の利息を月次、一括返済関連を出口へ分けると重複しにくくなります。
税務表では、家賃収入、必要経費、減価償却、借入金利子等を整理します。現金表では、実際に入出金した額を置きます。両者の差を説明できない場合は、申告前に税理士や税務署へ確認します。
売却価格は一つにせず、低位・中位・高位の根拠ある範囲を置きます。高位だけで黒字になるなら、「儲かる計画」ではなく「高い価格で売れた場合の計画」と明記します。
売却後の現金がプラスでも、それまでの自己資金と持ち出しを差し引きます。残債を返して100万円残っても、購入時と保有中に合計200万円出していれば、単純な現金差はマイナスです。税はさらに個別確認します。
自己資金利回りが高く見える場合は、借入比率が高いため分母が小さい可能性があります。収益性だけでなく、家賃下落や価格下落が自己資金に与える影響も同時に見ます。
利回りが低い物件はすべて不適切、高い物件はすべて優良とはいえません。価格、需要、管理、修繕、借入、出口が異なるからです。利回りは比較の入口として使い、その後に手残りと総収支へ進みます。
計算表は毎年更新します。家賃入金、空室日数、実費、返済残高、査定を実績へ置き換え、当初計画との差を確認します。差が続くなら、原因が一時的か構造的かを分けます。
家計では、物件の黒字を生活費としてすぐ使わず、次の空室・修繕・税の予備費を先に確保します。帳簿上の利益があっても、支払月の現金がなければ対応できません。
資料の数字が自分の表と大きく違ったら、どちらかを直ちに誤りと決めず、計算式と前提を一行ずつ照合します。費用の税込・税抜、月額・年額、満室・実績などの単位差にも注意します。
最終判断は「表面利回り○%だから」ではなく、悪化ケースでも生活目標を守れ、出口不足へ備えられるかで行います。条件が変わったら結論も更新する前提で保存してください。
物件を複数比較するときは、保有期間をそろえます。一方は5年、もう一方は35年の総家賃で比べると、金額の大きさだけが目立ちます。同じ年数、同じ空室・費用・金利・出口条件で比較してください。
自己資金も、頭金だけでなく購入時諸費用と購入後に確保する予備費を分けます。「自己資金ゼロ」という説明でも、手付金、諸費用、当初の持ち出しが本当に不要かは契約と融資条件で確認します。
表面利回りの分母が物件価格だけなら、諸費用を含む総投下額でも計算します。分子が満室家賃なら、空室・家賃下落後でも計算します。二つの利回りを並べると、広告値と自分の想定との差が分かります。
ローン返済後の月次が黒字でも、元金返済を必要経費として扱わない税務差により、納税用現金が必要になる場合があります。税務上の黒字と現金黒字が一致しない年を想定し、納税資金を分けます。
反対に現金収支が赤字でも、減価償却を理由に「節税できるから問題ない」としません。赤字が空室や高い購入価格から生じるのか、返済の元金部分によるのか、費用の時期によるのかを分解します。
売却税の試算では、購入価格をそのまま取得費にせず、建物の減価償却や譲渡費用などを個別に確認します。税引前の売却手残りと税引後を分け、税率だけを一律に掛けないでください。
収益目標も金額で決めます。「老後対策」ではなく、いつから月いくらの手取りが必要か、その時点の築年と返済・維持費はどうなるかを置きます。目標に届かないなら、利回り表示にかかわらず計画を見直します。
主な確認元
最終確認日:2026年8月25日
執筆・確認:マンション投資判断ノート編集部
この記事は私が書いたよ!
マンション投資の収支判定室
「マンション投資の収支判定室」編集部です。マンション投資を検討している会社員に向けて、表面利回りだけでは見えない毎月の手残り、空室・修繕・金利上昇、ローン残高、売却時の出口まで整理して発信しています。営業資料や口コミだけで結論を出さず、官公庁資料や各社の公式情報を優先して確認。「買う・見送る・売る」を数字と条件から冷静に判断できる材料をお届けします。